【研究室の研究テーマ】
コンピュータシステムの基盤研究:コンピュータの設計とテスト,設計自動化(CAD),高信頼化,低消費電力化 など
コンピュータシステムの応用研究:IoT,xR など
ディペンダブルシステム設計学研究室(大竹研究室)では,人々や社会の安全・安心・安定のために必須となるコンピュータの高信頼化・低消費電力化技術,および,その応用としてモノのインターネット(IoT), xRreality(xR)に関する研究開発を行っています.
ディペンダビリティとは,人々が安心して頼ることができる性質のことを言います.LSIやそれを使ったコンピュータ,コンピュータで実現されるシステムなど,ディペンダブルなシステムの実現を目指しています.
卒業研究を通して, 高収入プログラミング言語第1位(2017年)のVerilog(厳密にはハードウェアを記述する言語)が学べます. その他,実験や開発にC,C++,Java,Python,R,Perl,VHDLなどを使います.
電子情報通信学会情報システムソサイエティ誌に指導教員のインタビュー記事があります.
【研究の背景】
私たちはコンピュータに依存して暮らしていますが,そのコンピュータは本当に信頼できるものでしょうか.宇宙開発やスーパーコンピュータ,鉄道などの交通システム,携帯電話網などの通信システムといった科学技術やインフラを支えるコンピュータでは,特に信頼性の確保が重要です.また,人工衛星や携帯機器,IoT機器では電源が限られている場合があるため,低消費電力でなければならず,永続的に情報機器を利用するには,環境への配慮が不可欠です.私たちは,情報科学の立場から信頼性や持続性をもったシステムの実現とそれを提供する技術開発を担っていかなければなりません.
コンピュータシステムは,大きく分けてハードウェアとソフトウェアで構成されます.ソフトウェアはバグ(設計誤り)や脆弱性,信頼性の問題が見つかれば,そのソースコードを書き直して再コンパイルすることで,運用時にも更新することができます.しかし,ハードウェアは製造してしまうと設計誤りを取り除くことはできず,製造時に欠陥が混入する可能性があり,経年劣化などから故障することもあります.また,ハードウェアが直接電力を消費します. 大竹研では,コンピュータのハードウェア,特に 大規模集積回路(LSI)を対象にコンピュータの高性能化,高信頼化,低消費電力化に関する研究テーマに取り組みます.
コンピュータは,論理(ディジタル)回路やメモリ,アナログ回路など様々なLSIで構成されます. LSIはトランジスタや抵抗などの素子を集積した電子回路で,光学や化学など様々な技術を用いて作られています.私たち情報科学の分野は,その設計図となる 論理回路(ディジタル回路)の設計や,その設計自動化を担当しています.近年,計算機援用設計(CAD)技術の発達により,ハードウェア記述言語とよばれるプログラミング言語に似た言語で回路を設計し,CADソフトウェアを用いて自動的に論理回路を合成,さらにシリコンウエハに焼き付けるパターンまで自動的に生成するようになっています.しかし,これらの技術開発に終わりはありません.LSIの高性能化,高信頼化,低消費電力化をさらに進めていくためには,半導体素子の微細化や高集積化など製造技術の進歩に伴って新たに生じる様々な問題に対して,それらを解決するための設計技術およびCAD技術の研究開発を続けていかなければならないのです.
一方,LSIを利用したコンピュータシステムは多岐にわたり,人やモノの状態を蓄積して解析・応用するサイバー・フィジカル・システム(CPS)が広く使われるようになり,xRが身近なものとなっています.
近年のコンピュータの小型化低消費電力化と,携帯電話網などの通信システムの発達により,誰でも手軽に様々な場所で人やモノの状態をモニタリングし,そのデータをクラウドと呼ばれる計算資源を活用して蓄積・解析することができるようになっています.このCPSの新しい利用形態の創成が期待されており,また, ミッションクリティカルシステムへの応用においては,IoT機器といえどもリアルタイム性や安全性,信頼性の確保も求められています.
近年のトラッキング技術やディスプレイ技術の向上により,HMD(Head Mounted Display)のように多くのVR(Virtual Reality)やAR( Augmented Reality),MR(Mixed Reality)機器が普及してきており,エンターテインメントだけでなく,災害現場の再現や医療におけるシミュレーションなど,様々な分野においてその応用が広がっています.このような技術は,対象となる空間に没入し,現実では難しいことを仮想空間で体験することで,より直観的なコンピュータとのインタラクションを可能とし,計算機技術の新しい利用形態の創成が期待されています.
【卒業研究テーマ】
大竹研究室の卒研テーマは,コンピュータシステムに関する以下の2つの基盤研究と,2つの応用研究に大別することができます. この分野ではそれぞれ課題は山積になっていますので,テーマごとの定員はありません. テーマごとに研究スタイルが異なりますので,配属後,背景やアプローチの仕方がわかってから,自分に合ったテーマを選ぶと良いでしょう.
《コンピュータシステム基盤研究》
- コンピュータの論理設計とテスト(どのようなコンピュータを作るか?)
本テーマでは,論理回路設計,アーキテクチャ設計,コンピュータの高性能化,高信頼化,低消費電力化を実現するためのシステム設計,データマイニングによるテスト結果予測などを扱います. - コンピュータの設計自動化(CAD)(どうやってコンピュータを作るか?)
本テーマでは,高性能,高信頼,低消費電力を実現するためのCADアルゴリズム(ハードウェアを設計するためのソフトウェアプログラム)の研究開発を行います.
《コンピュータシステム応用研究》
- IoT機器およびそれを用いたサイバー・フィジカル・システム(CPS)の開発・高信頼化(何をコンピュータで実現するか?)
本テーマでは,コンピュータの論理設計とテストに関する技術を応用し,現在めざましく発展しているIoT機器の開発と高信頼化,IoT機器を用いたCPSの開発と高信頼化を目指します. - xR技術の利活用(どうやってコンピュータを使うか?)
本テーマでは,xRと呼ばれるVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality),MR( Mixed Reality)技術を活用したコンピュータとユーザとのインタラクションを構築し,人間の生活を支援する新たなサービスの提案を行うことを目指します.
上記は現在行っている研究の一部を挙げているに過ぎません. コンピュータの部品としてのLSIの設計から,LSIを使ったコンピュータシステムの設計まで広く扱っていますので,関連領域でやりたい研究がある場合には,是非気軽に相談してください.
【共同研究】
現在,他大学とも連携し,産業界との共同研究を行っています. 連携している大学としては, 九州工業大学,奈良先端科学技術大学院大学,東京都立大学,愛媛大学などがあります.現在,IoT応用に関する共同研究先企業としては,高橋製茶(大分),ぶんご銘醸(大分), JR九州, 柳井電機工業(大分)などです. 大学院生はもちろんのこと,学部生の皆さんにも,積極的に共同研究に関わってもらっています.
共同研究の醍醐味は,実際の企業や社会のニーズに応える技術開発ができることです.開発にはこれまでに学んできたすべてを使って応用する必要があり,とても良い経験になります.企業の方々との交流により,インターンシップや就職活動の際にスムーズに企業の方と接することができるようになります.
【地域連携】
本研究室は福羅酒造(鳥取)、高橋製茶(臼杵)とコンソーシアムを構成し,「地域・伝統産業におけるIoTによる工程可視化」プロジェクトを実施しています.本プロジェクトは,大分IoT推進ラボ認定を受けています.